富士山を見てきた。

編んだり縫ったり、アクセサリーやリメイクお洋服を作る岩切エミとの連載よみもの。日曜日更新。

山好きな父のこと

富士山を見てきた。年に何度か、生前父が建てた河口湖の家に行く。リビングから河口湖の向こうに富士山が綺麗に見える。教師をしていた父は、私や孫にまで敬語で話すような人だった。定年後その家に移り住み、毎日たくさん富士山の写真を撮っていた。富士山の写真集に父の写真が載る事もあった。何度も富士山に登り山登りが好きで、ヒマラヤに登りたい為にカトマンズで日本語学校を作ったくらい山好きな人だった。

その家に行くと、どんな事を想って富士山を見ていたのかなぁと父のことを思う。山は見るものと決め込んでいる私は何度も誘われたのに一度も父と山登りに行かなかった。一緒にネパールに行った時でさえ「行って来て~」と送り出し、私はホテルでビールを飲みながら本を読んで過ごした。今となれば一度くらい一緒に山を歩いても良かったかなぁと思う。

父の危篤の知らせでドキドキしながら乗った新幹線の車内からも、とても綺麗な富士山が見えた。私にとって富士山は父の象徴のようになった。父はそれをきっと喜んでるだろうなぁ。年の瀬に澄んだ気持ちになれました。

いい日曜日を。

何を見ると父親のことを思い出すだろう?考えた結果、わたしは「生地の薄いハンカチ」。わたしの父はすぐに破けてしまいそうなほど薄く柔らかい生地のハンカチが好きで、いつも持ち歩いている。子どもの頃から泣いたり汚れたり、わたしがピンチの時に登場する父のハンカチ。(もも)

岩切エミ
大阪生まれ。多くのファッションメーカーの商品企画、開発に携わり、99年にオリジナルブランド を立ち上げリメイクを中心とした物作りする。
著書に『ちょっと かぎ針編み』『アクセサリークロッシェ』『大人のドールつくり』など。
Instagram:@emi_i.tokyo

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