私は手芸を教えているのではなくて、手仕事する場を作っているんだなぁ

築地にある創業100年近い「うおがし銘茶 茶の実倶楽部」で、月に一度の手芸部をはじめて1年ちょっと。同じビルの5階のギャラリーで、手芸部の作品展をすることになった。

こつこつフレンチノットで埋め尽くされたネックレスや丁寧に手織りでできた物。びっくりするくらいの数の刺子、カラフルにビーズを刺したブローチ。リングを編み込んだネックレスに色んな布で作ったポーチ。織りを作るように刺繍された動物達に、手ぬぐいから出来ているあずま袋。今回は私の作ったものは一切並んでいない。

教会を想うような天井の高いギャラリーに、ずらりと作品が並ぶ。それを眺めていると、「私は手芸を教えているのではなくて、手仕事する場を作っているんだなぁ」と思う。作ることはひとりでもできる。けれど一緒に作る人がいると自分では選ばない色を使ったり、知らない方法を教えてもらったり、褒められてやる気が出たり。集まるからこそできることってある気がする。作品のひとつずつがどこか楽しそうな雰囲気なのは、手芸部のみんな集まった時に作り出す空気が糸や布の一部になったんだろうとも思う。

手芸部のみんなは慣れない接客やお会計にあたふたしていたけれど、賑やか日々を過ごしているうちに会期の5日間はあっという間に過ぎていった。さて次の手仕事の場はどこにしようかな?

いい日曜日を。

「就職や転職した時って緊張しますよね。どこに立っていいかもわからなくて、居場所に困る」とわたしが言うと、知人が「ぼくはそういうことで緊張したことがないです。だって自分が立っている場所が居場所じゃないですか」となんてことない顔で言った。わたしはとんでもなく驚いてしまった。何の関係があるかわかんないけど、「場を作る」という言葉を聞いて思い出した話です。(もも)

にちようびのエビ
編んだり縫ったり、アクセサリーやリメイクお洋服を作る岩切エミとの連載よみもの。日曜日更新です。
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