ポリエチレン糸との出会い

毎日暑い日が続いてますね。
私の作品の多くは天然素材でできていますが、夏になるとポリエチレンの糸のアクセサリーを作っています。釣り糸やテグスのような糸で、汗をかく夏は水分を吸わないこの素材が大活躍。ざぶざぶお水で洗ってもタオルでポンポンふけばすぐに乾くので、お手入れも簡単です。

この糸との出会いは十数年前。60年代・70年代に活躍した手芸家の泉清香さんが亡くなり、彼女のアトリエの片付けを手伝った事でした。大きなお屋敷の中に昭和に建てられたであろう離れがあり、そこをお教室やアトリエにされていたようです。遊び心のある彫刻の欄間や、可愛い柄の入った磨りガラス。日本家屋だけれど、どこか外国の雰囲気も感じられるようなドアノブに照明器具。作品も含めてその離れの全てが素敵でした。相続で土地を売るので離れを取り壊すと聞き、このまま小さな手芸の美術館にならないものかと出版社の人達とあれこれ相談したのを覚えています。

残すべき作品は母屋に運び、売れそうな材料達はアトリエでフリーマーケットをして売るなど仕分けました。そして、一般の人が使いにくそうだからと何を作るかも決めず買わせて頂いたのが、このポリエチレンの糸でした。何年も集めたのだろうと思うほどたくさんの色数が揃っているカラフルなポリエチレンの糸は、旭ダウや小泉製麻株式会社など色んな会社が同じ糸を作っていたようなので、おそらく過去に手芸業界で流行った糸なのだろうと思います。泉清香さんはたくさんの雑誌で連載を持っていたり、作品を提供されていたようですが、この糸で作った物を見つけることは出来ず、どんな物を作っていらしたのか今は知るよしもありません。

数年たち、糸メーカーさんに「何か作って欲しい糸はないですか?」と新しい糸の開発を相談されたことがあり、思わずこの糸を見本に新しい糸をリクエストをしました。十数年経った今でも、泉清香さんが残してくれた糸と新しく製造された糸を合わせてアクセサリーを作っています。一度お会いして一緒に何か作りたかったなぁ。この糸で作ったアクセサリーを買ってくれる人に出会ったら、いつも泉清香さんの話をしています。糸と共にちょっと彼女の存在を伝えられたら嬉しいです。

いい日曜日を。

糸メーカーさんから作って欲しい糸を相談されるなんてことがあるなんて、一ミリも想像したことがなかったので驚いた。わたしがもし聞かれたら、どんな糸を答えるかな…と考えてみたら、「勝手に針穴に通ってくれる糸」とか「糸の収納は場所を取るから、使ってない時は小さくなり、編むときには通常サイズにもどる糸」とか、ファンタジー世界にしかなさそうな糸しか思い浮かばなかった。(もも)

にちようびのエビ
編んだり縫ったり、アクセサリーやリメイクお洋服を作る岩切エミとの連載よみもの。日曜日更新です。
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